菊田俊介さんライヴ〜at Bright Brown


3月18日、中野にあるライヴ・ハウス「Bright Brown」で
菊田俊介さんのライヴが行われた。
菊田さんはシカゴ在住のブルース・ギタリストで、
ココ・テイラーのレギュラー・ギタリストとしても活躍されている。

CDやDVDを通して菊田さんのギターを聴いていたが、
生で聴くのは今回が初めて。
だから、この日、菊田さんにお会いして、
目の前でギター・プレイを拝見できることを
とても楽しみにしていた。

私が会場に着いたのは20時40分頃で、
ライヴ開始予定時刻からすでに10分程経過。
ビルの2階にあるライヴ・ハウスに行こうとして階段を昇っていくと、
人が立っている。
「まさか・・・」と思って上を見上げたら
入り口付近は会場の中に入れない人であふれていた。

誰かが言った。
「まるで満員電車の中にいるみたいだね・・・」
私は少しずつ前に進み、
ようやく入り口のところまで来て、会場からもれ聴こえる音に耳を傾けた。

中を見ると、立ち見の人でさえ窮屈そうにしている。
これでは、とても中に入ることはできないと思ったが、
菊田さんが「シカゴ ミッドナイト〜♪」とオリジナル曲を歌っている頃、
やっと会場の中に足を踏み入れることができた。
それからは隙間を見つけてステージの方に進み、
通路にひざまずいて観ていた。

菊田さんは赤のテレキャスターを弾いていて、
ギター・テクニックは文句なしの素晴らしさだ。
何よりも全身からあふれる情熱がギターに
注ぎ込まれているのが肌で感じられ、
そのことに最も感動した。
菊田さんの後ろの壁には、
B.B.キングがルシールを弾いている写真がかかっている。

その後ジャム・セッションに移り、
愛用のギターを抱えた人達がステージに上がってきて、
思い思いにフレーズをかきならす。
セミアコ、テレキャス、レスポールなどスタイルも様々で、
そういったギターを見るだけでも楽しい。

店内を見渡すとブルースマンの写真がズラリとかかっていて、
居心地がますますよくなってくる。
ハウリン・ウルフとマディ・ウォーターズのブルース・バトルのポスターも貼ってあり、
マディの眼が鋭く光ってこちらを見ていた。

「3コードでこんなに盛り上がれるなんてブルースはやっぱりスゴイ!」
と感慨にふけりながら演奏に浸る。
菊田さんもセッションに参加されていて、ギターは3人。

時々菊田さんはブルース・ギターの「先生」にもなる。
「スロー・ブルースでは、歌と歌の合間にオブリガード(装飾的なフレーズ)を入れましょう。」
「プレイヤーは常にまわりが何をやっているかに気を配り、
ソロを弾いている人がいたら、自分は何を弾けばいいのか考えましょう。」
などといったことを解説してくださる。
先生はソロをふれらても、他の人に譲ることが多かった。
セッションのレベルは高く、菊田さんの猛烈なスライド・ギターも聴けて
私としては大満足。

白熱した演奏の合間に菊田さんとお話をすることができた。
ココ・テイラーの病状を教えてくださり、
だいぶ身体も回復して歌も歌えるようになったとのこと。
安堵の気持ちと共に
ブルースの女王にはいつまでも元気でいて欲しい、
そして歌を歌い続けて欲しいと心から思う。

会場には若い世代の方の姿も目立ち、
セッションには、小学校を卒業したばかりの女の子もドラムとして参加していた。
・・・とても嬉しい気持ちになる。

菊田さんのDVD「シカゴ・ブルース」を日頃から観ていたので、
菊田さんとは初めてお会いしたという気がしなかった。
「シカゴ・ブルース」には、菊田さんのライヴや街のブルース・ガイドの他
ブルース・ギター・クリニックも収録されている。
基礎はもちろんのこと、B.B.キングやマディ、エルモア・ジェームスなど
巨匠のブルースマン達の
テクニックも丁寧に説明されているので、
ブルース・ギターに興味のある方には是非お薦めしたい。

情熱と冷静さを兼ね備えたフレンドリーな菊田さん。
いつかまた熱いギターを日本のファンの前で
披露していただきたいと強く思った。

<04・3・25>